3月1日付朝日新聞夕刊に「80時間未満でも労災」という見出しの記事が掲載されました。2月28日に東京地裁(竹田光広裁判長)で出された判決です。現在までのところ余り反響はないようですが、この判決は過労死の判断基準の一つである時間外労働時間が労働厚生省に定める80時間/月より下回っていても労災になり得るという意味で、チェックしておく必要があるかもしれません。
新聞によると「男性の死亡前の4か月の時間外労働時間は、月65~72時間で、過労と認定する際の目安として厚生労働省が定める月80時間を下回っていた。しかし、判決は『肉体的、精神的な負担があった』などとして仕事と死亡との因果関係を認めた。両親の代理人を務める川人博弁護士は、『80時間にこだわらず、業務の重さや精神的な緊張を考慮して労災だと認めた判決は珍しい』と評価している。」とあります。弁護士自身も「珍しい」と評しているので、労働基準監督署の判断が覆ると思っていなかったのかもしれませんが、時間外労働が月80時間以内であれば労災にはならないとしていたものが、そうではなくなる可能性が出てきたのではないでしょうか。
この男性は、死亡当時35才で電気会社の経理を担当し、新会計システムの導入や、合併する会社とのシステム統合プロジェクトにも参加していたとのことです。新聞は引き続いて、「休日の出勤が続いたうえ、死亡の3日前には出張先の静岡県沼津市まで車を運転し往復していた。」となっています。仕事が優秀な人間に集中するのは日常良くありがちですが、優秀が故にいい加減な結果は出せず、一人ストレスを溜めていたのかもしれません。これからは、職場の管理者が時間外労働を命じるときは、今までにも増して「部下の肉体的精神的疲れを把握しておく必要がある」ということですね。特に、責任感が強い人や物事に正面からぶつかっていく人に対しては、Face to Faceのコミュニケーションがより一層重要になってくるということですね。
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