皆さん、「準正社員」という言葉をご存知ですか。日本経済新聞が産業競争力会議での議論を踏まえて使っていいる言葉です。3月14日の朝刊は「日本の労働法や判例では、人員削減する企業は解雇回避の努力や人選・手続の妥当性などの条件を満たす必要がありハードルが高い。-中略-企業が正社員とパートの中間的な位置づけで地域や職種を限定した準正社員を雇いやすくなるよう政府が雇用ルールをつくる。人事制度上の扱いや雇用契約、事業所閉鎖時の対応で一定の基準を示し、解雇の際の訴訟リスクを減らす。現在の法制でも地域や職務を限定した雇用契約は認められるが、多くの企業は解雇した場合の訴訟リスクを恐れ、定着していない。」とあります。
更に新聞記事を取り上げてみると「準正社員の賃金水準は正社員の8~9割だが、期間の定めのない無期雇用で社会保険にも加入できる。パートや派遣などの非正規社員より生活が安定する。出産を機に退職していた女性の正社員が子育て期間だけ準正社員として働く選択肢も生まれる。流通業や製造業などの一部の企業はすでに準正社員制度を採用しており、そうした事例を周知していく。パートなど非正規社員を準正社員に転換させる企業への助成制度も拡充する。」とありますので、この「準正社員」制度は、以前良く見られた「総合職・一般職」制度と良く似ているようですが、「一般職という正社員制度」とは明確に別の雇用形態です。また、フルタイム勤務が前提のようですので、厚生労働省が勧めている「短時間正社員」制度とも違うようです。要するに「無期雇用であるものの地域や職種が限定される故をもって、賃金水準が8~9割となる」雇用形態ということです。一見合理的な雇用形態のようですが、例えば地域密着型の営業に専念していたとか、ベテランの職人さんで余人をもって代えがたい人とか、自分の周囲を見渡しただけでも代替不可能な人はたくさんいます。これから社会人になる若者が自分の育った故郷に恩返ししたいとか、パティシエのようなスペシャリストをめざした場合、準正社員として雇用されることが多くなるということでしょうか。
雇用の流動化は確かに大切なことですし、育児をしている時期だけ準正社員になり、育児が終わったら正社員に戻るというような「多様な働き方」ができる社会が理想であると思います。大手百貨店や一部の製造業では導入する知恵も体力もあるようですが、中小企業では、処遇制度が複雑になりすぎ、負荷がかかりすぎてしまうのではないでしょうか。3月16日付の日本経済新聞朝刊では、「産業構造 5年で集中改革」の見出しが踊っています。当分の間、この政府の動きには注目ですね。
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