4月7日(日)まで東京上野にある東京都美術館で開催されている「エル・グレコ展」に行ってきました。「エル・グレコ」というとスペインの3大巨匠なので、混雑しているかと思いましたが、予想に反してゆっくりと鑑賞することができました。驚いたのは、会場内の私語やコツコツというハイヒールの甲高い靴音が少なかったことです。皆無とはいきませんでしたが、中年のご婦人方も熱心に鑑賞されており、快適に鑑賞できました。
お恥ずかしい話ながら「エル・グレコ」の「グレコ」というのはイタリア語で「ギリシア」という意味であることを知りました。レスリングの「グレコローマン」スタイルというのも「ギリシアローマ」スタイルということですね。最初に掲示されていた「芸術家の自画像」から始まり、出口直前の「無原罪のお宿り」まで飽きずに鑑賞してきました。中でも、「ディエゴ・デ・コバルービアスの肖像」という肖像画は、「本作はフェリペ2世の肖像画家アロンソ・サンチェス・コエーリョ(1531頃-88年)が描いた肖像画をもとに、ディエゴの死後にエル・グレコによって描かれたものである。」(「展覧会公式図録」より)という解説があり、それぞれの絵が並べて出品されていますので、比較できますが「エル・グレコ」の筆致の方が粗いのですが、人物の内面的な感情の表現は「エル・グレコ」に一日の長があったように思いました。
最後の「無原罪のお宿り」は何故無原罪でキリストを宿したのか良く分かりませんが、「エル・グレコ」独特の細長い体躯と小さな顔の組み合わせで、いかにも「エル・グレコ」という絵画でしたが、礼拝堂の中で跪いて仰ぎ見るという形を想像してみると、「エル・グレコ」独特の表現だからこそ、「神々しく見える」のであると納得しました。
今回、「エル・グレコ」展を鑑賞しての感想は、「エル・グレコ」は宗教画家なのだということを改めて強く感じたことでした。宗教の布教に全身全霊を込めていたのではないでしょうか。彼の工房には、何点かのモデルとなる「エル・グレコ」の絵画が飾ってあり、お客の注文があるとモデルとなる絵画を模写して生業としていたそうです。いつの世も生き抜くというのは厳しい一面もあるのだなあと感じた「エル・グレコ」展でした。
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